頻尿・尿漏れの改善
◆ 頻尿・尿意切迫感
急に尿がしたくなって我慢できず(尿意切迫感)トイレに駆け込んでホッと一息。やれやれと安心したのも束の間、またもや尿意が…と、何回もトイレに行くようになる。
トイレの不安のせいで家事や仕事に身が入らず、夜には何度も目が覚めてトイレに行く。このように「トイレが 近い・トイレまで我慢するのが大変」という症状のことを「頻尿」などといわれており、全国で800万人いると推底されています。
中には、急な尿意に我慢できず漏らしてしまう(尿失禁)という人も少なくありません。1日に8回以下の人でも、自分では排尿回数が多いと感じる場合は頻尿といいます。このような症状の多くは治療で改善できます。「年だから仕方ない」「恥ずかしい」などとためらったり諦めたりしないで受診してみることはとても大事です。受診の結果頻尿などは何らかの病気の初期症状であるかもしれません。
◆ トイレが近い主な原因
トイレに近い(頻尿)という症状の原因は様々で、過活動膀胱・残尿(排尿後にも膀胱の中に尿が残ること)・多尿(尿が多い)・尿路感染・炎症・腫瘍・心因性に分けられます。
★ 泌尿器の病気
感染症(女性に多い膀胱炎・男性の前立腺炎など)・前立腺肥大症・腹圧性尿失禁・膀胱結石・膀胱や前立腺のがん・間質性膀胱炎
★ 泌尿器以外の病気
糖尿病・脳卒中の後遺症・脊髄の病気・睡眠障害(夜間頻尿と勘違いされやすい)
★ 薬の副作用
降圧利尿薬・α遮断薬
★ その他
過剰な水分摂取・精神的な緊張や不安・加齢
◆ 膀胱の役割と排尿の仕組み
膀胱は、腎臓で休むこともなく作りつづけられている尿を、一時的に溜めておく臓器です。膀胱の周りには排尿筋があり、その筋肉は普段は尿を溜めやすいように緩んでいます。

膀胱から尿の出口までの管を尿道といい、尿道は尿道括約筋という筋肉で囲まれていて、この筋肉は普段はしっかりと尿道を締めつけ、尿が漏れ出すのを防いでいます。
膀胱は、尿を300~500ml溜めることができます。膀胱がいっぱいになってくると、神経を通じて脳にいっぱいであることの信号が送られて尿意を催し、トイレに行って排尿の準備が整うと、脳から排尿の指令が発せられ、それまで緩んでいた排尿筋が縮み、逆に尿道括約筋が緩んで尿が勢いよく排泄(排尿)されるのです。この一連の仕組みがどこかでうまく働かなくなったら排尿トラブルが起こります。
◆ 過活動膀胱
膀胱内に尿はそれほど溜まっていないのに排尿筋が収縮して急に尿意を催し、頻尿を招く病気です。膀胱が活動し過ぎるのです。 ① 脳卒中・パーキンソン病などの脳・脊髄の病気のため、膀胱のコントロールが効かなくなります。前立腺肥大による排尿障害のために膀胱が過敏になるなどの原因で発生します。
② 加齢による老化現象として起こったり、原因不明(明らかに基礎疾患がない)のことも少なくない。
③ 尿が間に合わず漏れてしまう(切迫性尿失禁)、1回の排尿量は少なく、何回もトイレに行くようになる。
④ 残尿といって、排尿後も膀胱内に尿が残る状態で、前立腺肥大による排尿障害が進行すると残尿が発生する。 このほか残尿感のある症状は様々あり、結果的には何回もトイレに行ったり来たりを繰り返すことにもなる。
* 対処法
尿が近いといっても原因は多彩であり、病気に関係することもある。原因が、明らかに水分の摂り過ぎであれば、水分摂取を調整することで改善するが、病気にかかわる場合には、その原因を明らかにして、原因に応じた適切な治療や対処法をすることが必要です(この場合は、医師に相談することをおすすめします)。
◆ 尿失禁の種類
★ 切迫性尿失禁
尿意を催し、トイレに行くまでに我慢できずに漏らしてしまうことです。トイレに行く回数が多い・トイレに行ったばかりなのにすぐに行きたくなる。
これらは、膀胱が過敏に収縮してしまうので膀胱に尿を十分に溜めておくことができなくなるのが原因です。本来、脳は尿が溜まった段階まで排尿を我慢するようにしているが、切迫性では脳との連携がうまくいかず、勝手に膀胱の収縮が起こり漏れてしまうのです。特に、強い尿意とともに多量に漏れる。男性に多い病気です。
・ 原因
排尿の命令を出す脳や膀胱と脳との指令を伝える脊髄に問題がある場合、または」膀胱が炎症によって過敏になっている場合などに起こるといわれている(脳卒中・脊髄疾患等)。
・ 対処法…… 薬物療法
★ 腹圧性尿失禁
・ 咳やくしゃみ(腹部に力が入ったとき・大笑いすると漏れてしまう。
・ 重い荷物を持ったときに漏れてしまう。
・ 坂道や階段を下るときに漏れてしまう。
ひどくなると、普通に立ったり座ったり歩いたりといった日常的な動作の中で漏らすことがある。この腹圧性尿失禁は女性に多く、特に中高年の女性の4人に1人に見られる症状です。
* 原因……尿道・膀胱などの臓器を支えている骨盤底筋という筋肉が、妊娠・出産・肥満・加齢・骨盤底筋の筋力低下・便秘などによって弾力性を失って緩むために漏れやすくなるのです。
* TVT手術・TOT手術
女性の腹圧性尿失禁に対する中部尿道スリング手術があります。この手術は、膣からメッシュ状のテープを尿道の下に置き尿道を支えるようにするのです。これを行うと、お腹に力がかかってもこのテープが尿道を支えているので尿漏れを防ぐことができるのです。

この手術は、尿道を支えるようなメッシュテープを使用しているのであり、比較的侵襲な手術で効果は期待できます。中部尿道スリング手術は、腹圧性尿失禁の患者の70~80%に効果が期待され、腰椎麻酔下で約1時間程度の手術で3泊4日の日程ですみます。
* 対処法…… 骨盤底筋のトレーニング
★ 流動性尿失禁
流動性尿失禁は、その症状として
・ 前立腺肥大と診断されたことがある。
・ 日ごろから残尿感がある。
・ 出にくいの気づかずに少しずつ漏れている。
・ 尿が溜まりすぎて多量にダラダラ漏れる。
* 原因……尿道の閉鎖・膀胱の筋力の低下
* 対処法……原因疾患の治療
★ 機動性尿疾患
・ トイレに行くのに手間取る。
・ 尿意を介護の人にうまく伝えられずに漏らしてしまう。
・ トイレの場所がわからなくなり漏らしてしまう。
・ 排尿に関連して動作や判断ができない。
* 原因……機動能力の低下・認知症等
*対処法……動作訓練・環境の調整
◆ 頻尿・尿漏れ改善体操など
★ 丹田呼吸法(1分呼吸法)
頻尿や尿漏れなどで悩んでる人の共通するところは、括約筋が緩んでいる場合が多い。そこで、1分呼吸法を使って括約筋を締める体操をすることも一つの改善方法です。
括約筋を締めるのに大事なポイントは”丹田(たんでん)に力を込めることです。

・
・ 丹田(お腹の奥)を意識するのが難しい人は、お臍の下全体を意識
するとよいでしょう。
これはお臍の下にある丹田を意識しながらの体操です。
★ 体操の順序
* 立ったままで肩幅くらいに両足を開いて目を閉じて自然体のよう
に姿勢をまっすぐに伸ばします。
* 肩に力を入れず、両手の手の平を上にして軽く握り、お臍の前で
両手を クロ スして構えます。
* 大きく鼻で空気(息)を細くゆっくりと吸い込んでお腹を膨らま
せます。
* 次にお腹をへこらませながらお腹にある空気(息)すべてを吐き
ます
(この時、丹田を意識しながらお腹から絞り出すように息を吐きつ
づけます。)
* さらに、肛門(お尻)を強く締めるように力を入れます。
* クロスした拳は後方に肘を引きながら腰を締めていきます。
・ これを1日に5~10秒の5回で3セット行います。
* 丹田呼吸法の3ポイントは、
① 丹田を意識しながらお腹をへこませる。
② 肛門(お尻)をぎゅ~っと締める。
➂ 両脇を締めながら拳を後方へ引く。
さらに、最後まで息を吐き続けることで、息を吐きったら両手
をぶらりと下げて自然体に戻ります。
★ 足の裏のツボ押し
* 尿は尿管(輸尿管)を通り尿道口から排尿される。尿道の長さは、
男性が15~20cm、女性が2.5~4 cmと男性の方が長く
尿漏れはしにくい。
* ツボ押しとは、頻尿や尿漏れを改善するための足の裏にのある腎
臓から尿管 ~尿管から膀胱へと指先や拳で指 圧する一連のツボ押
しマッサ ージで腎臓か ら、または膀胱からでもおこなうことがで
きます。
* まず、足裏にある腎臓のツボを左右の親指または拳で5回ほどぎゅ
~っと押さえ、そのまま尿管へ押さえたままでマッサージしながら
膀胱へ と移動します。

★ 腎虚回復運動
* 頻尿・尿漏れ・残尿感などが起こるのは、下半身の筋力の衰え
(低下)から血流が悪くなってからだとい わ れ、このような状態を
腎虚といいわれ、頻尿・尿漏れ・残尿感を治すには下半身の筋力を
強して血流をよくするこが大事で腎虚の回復が必要なのです。
・腎虚体操(①または②の運動でどちらをやっても構わない)
① 下腹部を鍛える運動
両膝をのばして両足を前に投げ出し座り、両手を後方でついてか
ら、両 膝をのばしたままで両足を5~10秒間もちあげます。
(下腹部が中心で、両足首を持ち上げたときにお腹をへこませて締め
る。この運動は10から20 回繰り返す)
② 臀部(お尻)を鍛える運動
片足を交互に後方へ振り上げる。片足を振り上げた際の臀部(お尻)
にしっかり力が入っていることを確かる。
(運動をしているときは、後方に振り上げたさいの膝が曲がらないこと
で、交互 に20回繰り返します)
◆ 頻尿・尿漏れ対策
★ やってはダメなこと
* 水分摂取量を減らす
水分を摂れば「血液をサラサラにするため」と、過剰に水分を摂って
いる人 が います。水分を摂れば、確かに 脱水状態では血液の粘り気
が強くなります。
しかし、喉が渇いていないのに水を飲めばすぐに尿になってしまい
「血液サラサラ効果」は維持できません。水分を摂ってトイレに行き
たくなったどうすればよいのでしょうか。
これには、水分量を減らしたりして調節することで、それには飲み
の方工夫と改善が必要です。
● 水分の摂り方
① 飲むときはゴクゴクと一気飲みをしないこと。
この飲み方は、水分が吸収されにくく尿として出されてしまいます。
② チビチビとゆっくりした飲む。
ゆっくりと断続しての飲み方は、水分が吸収されやすく、①と同
じ量を飲んだとしても尿として出されにくい。
➂ 人間の身体の水分量は年齢とともに減っていくことから、水分を摂
ることは健康を保つ上でとても大切です。
* 尿が気になる人は、外出や寝る前の2時間前くらいから、水分量を
減らすこ とです。チビチビと効率よく摂ることに心がける。
* 冷たい飲み物は、身体を冷やしたりするので白湯か常温の水をのむ
ことで 吸収されやすくなる。
* お茶やコーヒーなどカフェインが多いものは利尿作用で尿を出して
しま うので控えること。
● 尿(おしっこ)を止めること。
尿をだすとき。膀胱が縮み尿道が広がるので、尿道をしめて排尿を
止めると正常な働きを妨げる。(どこか傷つけて尿道炎になったりす
ることもある)のでこれは止める。
特に、水分を摂らないと
・ 代謝が悪るくなる
・ 血流が悪くなる
・ 老廃物を出せない
これらは、身体にとって良くないことが起こってしまいます。
さらに、工夫の一つとしてトイレの間隔を少しずつ伸ばす(頻尿がつづ
いていると、次第に膀胱が小さくなり、より症状が進みかねない。それを
防ぐためには、トイレに行く回数をへらし、尿意を少し我慢することが大
切です。
また、排尿時に尿が出きらず膀胱に残っているために頻尿になっている
こと もあります。排尿直後なのに膀胱内に尿が50ml以上ある場合は専門
医の検査を受けることが必要です。
参考資料:
藤田医科大学医学部腎泌尿器科講座
日本泌尿器科学会
日本臨床内科医会 過活動膀胱
泌尿器科/乳腺外科 王子クリニック
自律神経専門整体師 前田祐樹