◆mRNAワクチンで人類を救ったカタリン・カリコ博士            

ノーベル生理学・医学賞にカリコ氏ら コロナワクチン開発貢献(2023年度)

  新生ワクチンは世界を救うだろう!

ウイルスの遺伝物質であるメッセンジャーRNA(mRNA)を人工的に合成し、投与する方法を確立した “ワクチン開発の立て役者 カタリン・カリコ博士は語る”

 今回のワクチンは、何が画期的と言えば、従来とは全く異なる発想で、90%以上という高い有効性を実現したことです。このワクチンは、新型コロナウイルスの中にある遺伝情報がもとになっています

 ★ 遺伝情報

 まずウイルス全体の情報の中から、表面にある突起の情報だけを取り出し、人工的な遺伝物質「mRNA(メッセンジャーRNA)」を作ります。それを特殊な脂の膜で包んだものが、「mRNAワクチン」です。

 遺伝物質の一つである「mRNA(リボ核酸)」は、体内で分解し炎症を引き起こしやすい。

カリコ氏はmRNAを構成する一つの物質を別の物質に置き換えると炎症反応が抑えられることを発見し、mRNAがワクチンに応用できるようになった。

★ 接種すると体の中で何が起きるのか

 細胞に取り込まれると、mRNAの遺伝情報が読み込まれます。すると、ウイルスの表面にあったものと同じ「突起」だけが作られます。

 この突起を血液中の免疫細胞が異物と認識して、次々と「抗体」を作り出します。いざウイルスが体の中に入ってくると、抗体がウイルスの突起に取りつき、感染を妨げてくれるのです。それだけではありません。ワクチンによって強い免疫機能を持つ「キラーT細胞」も活性化します。

細胞が感染したとしても、細胞ごと破壊しウイルスの増殖を阻止するのです。

★ ワクチン有効性は90%と高い

 私はワクチンの有効性は95%が高いと予想していました。以前に行ったジカウイルスやインフルエンザでの動物実験で、ワクチンの効果が高かったからです

 ワクチンを接種した人の唾液にも、抗体があることがわかり驚きました。そのため、ワクチンを接種した人たちが、ウイルスを広めることはないと思います。

 体の中だけでなく、唾液にも含まれていることが確認されたという抗体。感染経路の入り口となることで、ウイルスの侵入を防ぐことができれば、より感染のリスクを減らせると期待しています。

★ ワクチンの効果が2回の接種で、どのくらいの有効期間まで続く

 治験で2回接種した人たちが、その後、感染したかどうか追跡調査を行っていて、6か月が経ちました。次は9か月後に改めて調べて、有効性を確認します。有効期間はもっと長いと思います

抗体を作り、体を守る免疫細胞が記憶してくれるからです。ただ、記憶がいつまでもつかはわかりません。このウイルスを経験するのは初めてですから。

 インドで見つかった「変異ウイルス」

 今回のワクチンは、さまざまな変異ウイルスに対しても有効とみられています。常に変異ウイルスをチェックし、有効性のデータを公開しています。もし新たなワクチンが必要になれば、4~6週間で作ることができます。

 

今回のワクチンは、なぜ変異ウイルスにも素早く対応できるのか。それは、ウイルスが変異を起こしても遺伝情報さえ分かれば、それに合わせたmRNAをすぐに作れるためです。


その後の製造工程は、今回のワクチンと同じです。この技術は、とてもシンプルで調節しやすいので、新たなウイルスが出現しても素早くワクチンを作ることができる

ハンガリー出身の女性研究者

アメリカのペンシルベニア大学の研究者

ビオンテック上級副社長・科学者

カタリン・カリコさん (66)

ことし(2023年度)のノーベル生理学・医学賞の受賞者に新型コロナウイルスのmRNAワクチンの開発で大きな貢献をしたハンガリー出身で、アメリカの大学の研究者カタリン・カリコ氏、アメリカ出身のドリュー・ワイスマン氏ら2人が選ばれました

 

 

  

 

       

            

          

              

カタリン・カリコ客員教授 (米ペンシルベニア大客員教授・ビオンテック上級副社長・科学者)
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