★ コロナ対策は大事だがバラマキ合戦は国家財政が破綻する
◆ 財政事務次官の文芸春秋投稿記事内容
*文芸春秋11月号で矢野康治財務事務次官が「このままでは国家財政は破綻する」という内容で記載した。

= 誰が総理になっても1166兆円の“借金”からは逃げられない。コロナ対策も大事だが人気取り
のバラマキ合戦のような政策論を聴いていて、やむにやまれぬ大和魂か、もうじっと黙っている
わけにはいかないない、ここでいうべきことを言わねば卑怯でさえあると思います。
数兆円もの大規模な経済対策が謳われ、一方では、財政収支黒字化の凍結が訴えられ、さらに
は消費税率の引き下げまで提案されている。まるで国庫には、無尽蔵にお金があるかのような話
ばかりが聞こえてきます。
かって松下幸之助さんは、「政府はカネのなる木でも持っているかのように、国民が助けてほ
しいと言えば何でもかなえてやろうという気持ちでいることは,為政者の心構えとして根本的に間
違っている」といわれたそうですが、これでは古代ローマ時代のパンとサーカスです。誰がいち
ばん景気のいいことを言えるか、他の人が思いつかない大判振る舞いができるかを競っているか
のようでもあり、かの強大な帝国もバラマキで滅亡(自滅)したのです。
という書き出しから始まり、一介の役人に過ぎない私は財政をあずかり国庫の管理に任された立
場で、バラマキリスクがどんどん高まって状況を前に「これは本当の危険だとの危機感を持つに
至っている。
国の長期債務は973兆円、地方債務を合わせると1166兆円に上るという。これはGDPの2.2
倍、先進国ではずば抜けた借金を抱えこんでいるのに、さらに財政赤字を膨らませる話ばかり
が飛び交っており、このままでは日本はしてしまう、どんなに叱られても、どんなに搾られて
も、声だけでも大きく発して世の楽観論をお諫めして、言うべきことを言わなければならない
と。もう座してみているわけにはいかない、かって名官房長官といわれた後藤田正靖さんが、
内閣官房の職員に対しての訓示「後藤田5訓」の中の「勇気を以つて意見具申せよ」に従い、
大臣や国会議員に対して、ただ報告するだけでなく、それに的確に対処する方途についても、
しっかりと臆せず意見を申し上げる。さらに5訓の一つ「決定が下ったら従い、命令は実行
せよ」といわれる通り、役人としては当然とるべき道だと述べている。=

★後藤田5訓とは
① 省益を忘れ、国益を想え
② 悪い本当の事実を報告せよ
➂ 勇気を以って意見具申せよ
④ 自分の仕事でないという勿(なか)れ
➄ 決定が下ったら従い、命令は実行せよ
である。
この5訓はかっての上司・佐々淳行さんも厳しく取り入れて実践され、私もこの5訓を退職し
てからも、人生の教導として遵守してきた。

◆ 勇気を以って意見具申せよ
事が起きれば、地獄の底についていく覚悟で意見具申せよ「どうしましょう」と言うな「こう
します」と対策を震源せよ。
部下の意見によく耳を傾ける上司は現実的に少ない。意見具申すれば「生意気言うな」と一喝
される。また、一喝した内容を自分の意見のように取り上げる(部下の手柄を横取りする)上司
になるな、部下の手柄などを横取りする上司は失敗すると「お前があんなことをいうからだ」と
責任転嫁する。このような責任転嫁をするような上司は今でも少なからずいる。これが通用して
いると、どこかで歯車が狂ってしまう(筆者も、このような経験を苦く経験したことがある)。
◆ 決定が下ったら従い、命令は実行せよ
「大いに意見は言え、しかし、いったん命令が下ったらとやかく言うな。そして、ワシ(後
藤田官房長官)がやれと言ったら来週やれということやないぞ、いますぐやれとと言っとるん
じゃ、ええか」の言葉だ(筆者も、若い頃は従わないことがあったが、苦い経験を積み重ねる
うちにこの言葉が身に染みて強く動かされた)。
◆ 自分の仕事でないという勿(なか)れ
オレの仕事だ,オレの仕事だなどと言い合って争え、手柄になりそうなことは誰でも「オレ
の仕事だ」と言ってやりたがるが、困難なしごとは多かれ少なかれ手を汚すようなに「あな
たどうぞ」となり、逃げてしまい、そのことはトバッチリを恐れて手伝おうとしない(この
ような者はどこの組織・企業などにもいる)後藤田官房長官は「それは許さん、むしろその
逆の仕事振りでなければならないということであった。
◆ 悪い本当の事実を報告せよ
後藤田官房長官は「私が聞きたくないような報告をしろ」と言う。いい報告は後でよい、
悪い報告は即刻上げること、と。どの社会でもいいことは率先して報告するが、悪い報告
はしないか、遅くなって報告したり、報告しないことがわかって慌てて報告することが当
たり前のようになってしまう、対応が遅れをとり悪いことが大きくなってしまい手の施し
ようがない状態にまで追い込まれることが往々にしてある。
◆ 省益を忘れ、国益を想え
まず、自分の出身省庁や部局の利益を図るな、そのようなことをしたものは即刻更迭す
ると断言している。これは役所だけではない。一般の企業だって同じことが言える。
今回デジタル庁の職員構成でわかったことが、職員の98%が外部からの非常勤職員だっ
た。出勤も週2~3日程度だという。これでは国益を想うどころか、省益(企業益)を想い
続けた仕事となり、デジタル庁本来の仕事は寿司まないことが判然とした。デジタル庁は
後藤田5訓を逆にいっていることになる。
★矢野財務事務次官のバラマキ発言
後藤田5訓の「勇気を以って意見具申せよ」にのっとり「ただ単に報告を迅速に上申す
るだけでなく、それを的確に対処する方途についてもしっかりと臆せず意見を申し述べよ
うといっているのです」。「決定が下ったら従い、命令は実行せよ」とあり、役人として
当然のことです。私はこの5訓は吏道(役人道)の基本を見事に示しているとおもいます。
私たち国家公務員は、国民の税金から給料をいただいて仕事(公務)をしています。決定
権は、国民から選ばれた国民の代表たる国会議員が持っています。
決定権のない公務員は、何をすべきかと言えば、公平無私に客観的に事実関係を政治家
に説明し、判断を仰ぎ、適正に執行すること。しかし、これはあくまで基本であって、単
に事実関係を説明摺だけでなく、知識と経験に基づき国家国民のため、社会正義のために
どうすべきか、政治家が最善の判断を下せるよう、自らの意見を述べてサポートしなけれ
ばなりません。(中間略)
私は、国家公務員は「心あるモノ言う犬」であらねばと思っています。昨年、脱炭素技
術の研究・開発基金を1兆円から2兆円にせよという菅全総理に対して、」私が「2兆円
にするにしても、赤字国債によってではなく、地球温暖化対策税を充てるべき」と食い下
がろうとしたところ、厳しくお叱りを受け一蹴されたと新聞に書かれたことがありました。
あれは実際に起きた事実でsが、どんな小さなことでも、違うとか、よりよい方途がある
と思う話は相手が政治家の先生でも、役所の上司であっても、はっきり言うようにしてき
ました。「不偏不党」―これは、全ての国家公務員が就職する際に、宣誓書に書かされた
言葉です。財務省も霞が関全体も、そうした有意な忠犬の集まりでなければなりません。
(以下略)
★公務員だけでなく人として大事なこと
国益をそっちのけにして争い悪い本当の事実は報告せず、上司の耳に心地よい情報ばか
りを上げる、大事な時には意見具申もせず、沈黙して不作為を守りとおし、何か事が起き
ると「オレの仕事ではない」消極的な権限争いに没頭するばかり。
決定が下っても従わず、命令はなし崩しにウヤムヤにする。これは、まさしく官僚主義
そのものの姿である。これらは、官僚の専売特許でなく、民間企業にも広く曼延している。
後藤田5訓は、部下に課すもに自らをも拘束するもので、いかなることがあってもすべて
において積極的でなければならず、待ちの消極的なものであってはならい。後藤田5訓は、
今この時代に必要にして守るべきものである。矢野財務次官の言動は後藤田5訓をしっか
り引継ぎ守っていると思う。
参考資料(一部転載)
重大事件に学ぶ「危機管理」 佐々淳行著
文芸春秋11月号
