◆ 雲は生きている

      ★  雲を見て天気予想

 山を登りはじめの頃、山岳クラブの先輩たちが空を見あげて天気の予想をやっていた。空に浮かんだ雲の流れや形・色、風の方向などを見ていて、晴れだの曇りなどといって天気を予想していた。その予想も、ただ雲を見ていただけでなく、気象庁の気象情報や天気図なども参考にしていたようだ。

 当時、詳しいことを聞かなかったが上京して北アルプスや南アルプスの山々を単独で登り始めてから、自然と空を見あげて天気を予想するようになった。先輩から教わらなかったが、見よう見真似で身についたのかもしれない。登山で大切なのは天気である。朝、晴れていても昼過ぎあたりから雲行きが怪しくなり、突然の降雨に襲われることがある。

  気象庁などの天気予想は、山中にいても携帯ラジオ(今では、スマホ)でなどでとれるが、身の周りでの天気予想は空を見あげて雲の流れや形・色、風の方向などで確かめることが大事だ。とくに、山を登りつづけた経験から風に雨の匂いというか味を感じることがある。動物的な勘になっているのだろう。この、空を見あげて雲の流れなどから天気を予想することを”観天望気”といわれている。

      ★  観天望気

 観天望気とは、空の色や流れる雲の形、山の稜線などの風などで、その時々の空模様で数時間の天気を予想する経験則に基づいた天気予報で、登山する私や農工従事者などの人たちにとっては重要な雲見術ともいえる。

 観天望気は、テレビなどの天気図解析と観天望気は表裏一体で、衛星による天気予想だけでなく、今でも観天望気は重要な位置を占めている。

      ★  雲の流れや形を見る

 気象学の専門家の人たちは、雲の形を分類している。一般的には「十種雲形」と雲の姿や高さに発生する過程などを考察して、雲を10種類に分類している。

  十種雲形では、雲を巻雲・巻積雲・巻層雲・高積雲・高層雲・乱積雲・層積雲・層雲・積雲・積乱雲に分類している(参考:荒木健太郎著・雲を愛する技術)。専門学者ではないので省略するが、この分類のほか、雲の表情で親しみやすい雲として”うろこ雲・いわし雲・つるし雲・レンズ雲など天気と関係する雲の名前があり、底なしの雲の世界へ引きづり込まれていくことになっていく。

  

      ★  雲は生きている

 雲を見ていると時間を忘れる。雲は刻々と姿・形を変えていく。うろこ雲のように、空いっぱいに広がってすぐ消えないこともある。周辺の山々の気流や風の強弱によっていろいろな雲が浮かんでくる。

 また、雲を見ていて人の顔や動物の顔が表現されていったりすることが多い。この現象を”パレイドリア現象”といっています。パレイドリアは雲・石や樹木が人や動物の顔の見えたりする。自然が蓄えている不思議な世界のエネルギーと思う。

 風の強い日には、耳かきのような雲である鉤状雲(かぎじょううん)、レンズを横から見たようなレンズ雲、笠を重ねたような吊るし雲、たつ巻のような変わった雲、放射状に現れる雲で、巷間では”地震雲”ともいわれている。

 地震雲の名づけ親は、地震雲研究科鍵田忠三郎氏で今でも信奉者は多い。地震雲については気象庁や地震などの専門学者などは、科学的根拠がないと地震雲の存在を否定している。

 私は、地震雲が存在するという鍵田忠三郎氏の説に賛同して、地震雲なるものをも追いかけている。

 雲だけでなく、天気の予想として太陽や月の自然現象を見ることがある。太陽や月の周りの雲の中にある氷の粒に太陽などの光が届き屈折してできる現象で、日光環・月光環といわれるもので、天気にかかわってくる。また、朝の虹は雨、夕方の虹は晴との予想もある、明治以前の人たちが目の当たりに見た現象の記録から経験則として予想している。万物の霊長である人間も自然には勝たず、自然に教えられることが多いようだ。    

         ★  雲を見る楽しみ

 十種雲形で雲を見るとなかなか判断つかない。どれが巻雲でどれが高積雲か専門家でなければ見分けつかない。親しみやすい雲を見ることによって、誰でも雲の種類を見分けることができる。一つの例がうろこ雲だ。この雲は誰が見てもわかりやすい。

 雲の中でも夕焼けの空によく見る雲もある。まるでお皿を伏せたような感じの雲だ。これは通常つるし雲といわれ、天気が下り坂のサインでもある。山に入ると、北アルプスで見られるのは夕陽に萌えたあかね雲。北アルプスに入って初めてあかね雲を見た時すっかり興奮した覚えがある。

 雲ばかりでなく、夜空を見あげて月が虹に囲まれたような光景を目にすることがある。昼間だと太陽の周りの虹(日光環)だが、月の場合先にも書いたが月光環といわれる現象で天候が崩れるサインでもある。自然は人間の能力では理解できない大きな現象が宇宙を飛び回っている。だから、これらの現象も雲とともに追いかけるのも楽しい。

 

 

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